研究紹介:「みんな仲良く」だけが正解じゃない? ―協力の進化を科学する
2026.02.09ニュース学内ブログ在学生・卒業生向け地域創成学科
地域創成学科の佐々木達矢(ささきたつや)です。このたび、私たちの研究グループの論文が国際学術誌 Frontiers in Behavioral Economics に掲載されましたので、ご紹介します。
「恩送り」と「評判」の力
皆さんは、見知らぬ人から親切にされた経験はありますか?そんなとき、「今度は自分も誰かに親切にしよう」と思ったことはないでしょうか。これは「恩送り(ペイ・イット・フォワード)」と呼ばれる行動です。映画にもなりましたね。
一方で、「あの人は信頼できる」「あの人はちょっと…」という評判を聞いて、付き合い方を変えることもあります。良い評判の人には協力し、そうでない人には距離を置く―これも私たちが日常的にしていることです。
私たちの研究では、この二つの仕組み(恩送りと評判に基づく協力)を組み合わせた「統合型間接互恵性」という考え方を提案し、それが大人数のグループでどのように機能するかを数学的に分析しました。
意外な発見:非協力者も必要?
従来の研究では、「どうすれば全員が協力するようになるか」という問いに焦点が当てられてきました。しかし、現実の社会を見渡すと、協力的な人もいれば、そうでない人もいます。この「行動の多様性」は、なぜなくならないのでしょうか?
私たちの分析が示した意外な答えは、非協力者の存在が、実は協力的な社会を安定させる役割を果たしているということです。非協力者がいることで、「誰にでも無条件に協力してしまう人」(いわゆる「お人好し」)が増えすぎることを防いでいるのです。お人好しばかりの社会は、一見理想的に見えますが、実は悪意のある人に簡単に利用されてしまう危うさがあります。
つまり、非協力者は「進化的なシールド(盾)」として、協力的な社会を守る働きをしているのです。
グループが大きくなると協力は難しくなる
もう一つの重要な発見は、グループのサイズが大きくなるほど、協力の割合が下がるということです。2人のやり取りでは約60%の人が協力的な行動を取りますが、10人のグループになると約37%まで下がります。これは、大規模な組織や社会で協力を維持することの難しさを、数学的に説明しています。
皆さんも経験があるかもしれません。少人数のチームでは協力しやすいけれど、大きな組織になると「誰かがやってくれるだろう」と思ってしまうこと、ありませんか?
おわりに
「みんな仲良く協力しましょう」という理想は大切ですが、現実の社会では、異なる行動パターンを持つ人々が共存しています。私たちの研究は、そうした多様性そのものに意味がある可能性を示しています。
この研究は次の方々との共同研究です:内田 智士 先生(倫理研究所、国士舘大学)、岡田 勇 先生(創価大学)、山本 仁志 先生(立正大学)、中井 豊 先生(関西大学)。また、本研究は日本学術振興会の科学研究費助成事業(科研費)による助成を受けています:23K05943 (TS, YN), 23K21017 (IO, HY), 21KK0027 (IO, HY), 23K25160 (HY, IO), and 25K21907 (IO)。
この研究成果は、オンラインジャーナル Frontiers in Behavioral Economics に掲載されており、オープンアクセスで自由にダウンロードできます。
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この研究の基礎となった2人ゲームの論文もあわせてご覧ください:












